日記3

くろぶだう

宮沢 賢治,たなか よしかず
未知谷

宮沢賢治の
黒葡萄っていう短い話を
絵本の版画がかわいらしくて読んだ。
調子のいい狐に誘われて
内心いいとも思えないのに
どなたかのお屋敷に一緒に忍び込む子牛。
テーブルの上の黒く輝く葡萄。
部屋の外から聞こえる人の声。
少し緊張が高まって
ほっと緩むようなそれでどうしたのというような
優し気な終わり方をする。
挿絵の葡萄や
子牛のイノセントな瞳がすごくいいなあと思った。
見ずに文字だけ読んだとしても
こういう風には思い描けない。
そのために挿絵はあるのかななどとも思う。
同時に、いやまて挿絵がなければ
もっと自由に心象を描けるのかもなどとも思い、
じゃあ本という本から挿絵が消えたならば
イマジネーションはドームのように広がってゆき
挿絵を描く私の仕事は必要なくなるが
まあそれならそれもいたしかたないかもねと
いろいろ思って午後が暮れていく。
連休明けの平日など
勤勉なふりをした遊び疲れた人たちが
正気を確かめ合っているだけですね。
のんびりと、でもさぼらずいこう。