きまぐれレビュー

『想像ラジオ』

いとう せいこう
河出書房新社

「賞の候補になってる本だから
もしも賞を取ってしまったら
そのせいで読むみたいだと
誰もそんなことを言わないのに
自分ひとりでへそを曲げて読めなくなる危険があるよね。」

というわけで

『想像ラジオ』

読みました。
タイトル&装丁だけでも
もうくらっとしてしまうんですけれど、

凄くすごくよい物語だと思った。

想像することや
音楽を想うこと
思念を分かち合うことで
非現実的ではあっても
人と人の間にとくべつなつながりが生じることって
あると思いませんか?
ここでいうならDJアークの想像ラジオのリスナー達。

新聞にかかれないこと
報道でいわれないこと
情報に振り回される
リアリストの立場からは見えないことがある。

だけど深く想像をすれば
無いとされているものも有るのだし
他人ですら他人で無くなってしまう。
自分が自分であるという
境界も定かではなくなってしまう。
そこって彼岸のかなたじゃなくて
目的地なのではないかとさえ。

手元にラジオがなくても
電源が入らなくても
想像ラジオは聴こえます。
たぶん、発信も可能なのでは。

チューニングの仕方を知りたいひとは
読んでみてね。

哀しいかもしれないけど
それはかつてあったことで
これからも身近にありつづけることだから。