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足りるだろうか?

『窓の向こうのガーシュウィン』宮下奈都

宮下さんの小説に出てくる女子は

音楽家の卵やうどん屋の娘や

口紅売りの娘やふつうのOLやら主婦やら

いろいろですが、性格がしゃんとしていて

ユニークで友達にしたい人ばかり。

中でも私がとりわけ好きな子が

この本の主人公の、佐古さん。

「足りない、足りないといわれて育った子」

の設定で出てきます。

未熟児でいろいろ未発達、

耳も良くないし親もちょっと変・・

みたいなところから低い視点で語りが始まるんですが

その低空飛行の景色の豊かなこと美しいこと

中盤からはふわっと浮いて跳んでいきます。

足りないどころか余りすぎるくらい。

魂は計ったり比べたりするものじゃない。

だから周りなんか恐れず、

耕すべきところを豊かにしておくのが大切なんだと思う。

だから心が豊かなのであれば、話の中でも出てくるのですが

認知症のような状態も・・誤解を恐れずに言えば

本人的には幸せの中ですごしていけるのかもしれない。

そうすると逆パターンはつらいのかもしれない。

足りなくなくて、ちゃきちゃきと人と交わっている一方

嘘やごまかしが多かったりして

畑の方が荒廃していたら。

どうだろうな、そうだとしても

がんばって土起こせばいいかな。

まあ気楽に行こう。

われわれは農耕民族である。(たぶん)

そうそう、特筆すべき主人公のチャームポイント。

耳のせいで人との会話がうまく続かなかったりして

険悪な雰囲気になると、場を和ますために

突然、

「ハニーミルクカステラ」

とか

「きなこかりんとう」

とか

「白くまアイスバー」

とかつぶやいたりするんです、かわいい。

成功することもあれば

却って混乱を招くこともあるという・・・

だいぶズレてる。

真似して流行らせたい。