きまぐれレビュー

真昼のトムの庭で

名古屋の市営地下鉄東山線、一社駅の近くに「トムの庭」という絵本・児童文学の書店があります。白い出窓のお部屋があって、児童文学や海外の翻訳絵本がいっぱい並んでいます。

トムの庭

そこで先週「作家・翻訳家 石津ちひろさんをお招きして」という会があったので参加してきました。

ちょうどこの夏、8月14日まで「すずき出版」フェアが開催されていて、すずき出版の海外絵本・児童文学の美しい表紙がずらり、トムの庭に勢ぞろいしています。

会の中では、近刊のマット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン絵による3冊の絵本『おばあちゃんとバスに乗って』『カルメラのねがい』『マイロのスケッチブック』(すずき出版)の朗読を聞きました。この3部作、とてもいい絵本だなあと思います。翻訳の石津さんと、すずき出版の高瀬さんによる制作秘話があたたかく面白く、作品にますます愛着がわいてしまいます。

『マイロのスケッチブック』
マット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン絵 石津ちひろ訳
すずき出版

石津さんは翻訳のほかに、回文や言葉遊びの絵本も多く手掛けられています。当日は、会の初めから、即興で回文をいくつか披露してくれました。止めなければいつまでも出してしまうとも仰られていましたので、言葉に対する向き合いかたがまるで普通とは違う、ものすごい解像度で言語をとらえているなあと感動しました。

また、以前に被災地に講演に行った時の子供たちの様子から、「心が研ぎ澄まされていると、言葉がすっと心に入っていく」とも仰っていました。

心が雑然としているときは、物語も景色も人の言葉も、通り過ぎていくばかりなのかもしれません。資料を読むみたいに必要なとこだけラインするとか、ネットで記事をザッピングするみたいに過激なモノを防御しつつ読むとかじゃなくて、子供の頃にかえったように没頭する読書の時間に恋焦がれてしまいます。

トムの庭、ってネーミングは、やっぱり、フィリッパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』から来ているんでしょうか。

会の終わりに、併設のkokoti cafeのスイーツセットが。ジンジャーエールとシナモンロール。

この本だけ、なぜか紹介されないうちに時間がきてしまい、残念でしたが、『スノーウィとウッディ』(好学社)むちゃくちゃかわいいです。

サインももらってきましたよ。

『マイロのスケッチブック』はすずき出版のyoutubeでも紹介されています。

『マイロのスケッチブック』 マット・デ・ラ・ペーニャ作 クリスチャン・ロビンソン絵 石津ちひろ訳 すずき出版