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井戸めぐりを

そのときはちょうど
奈落の底みたいなことを描いていた。
だからなのか
そのひとの痛みを想像したときに
ものすごい恐怖だろうと
寒くて凍り付いてしまった。
誰でも孤独なんだとか、
みんな同じなんだとか
まったく意味のない考えに思える。
あのひとが泣いていたとき
ああもうそれは仕方がないねと
ふんふんと聴くしかできなかったけれど
それもよかったんだか
意味がなかったんだか。
どのひとの井戸の底にももちろん
いっしょにならんで座れるようなスペースはなくて
あったらそんなもの底でもなんでもないんだし
それでわたしの作ってるものの
すすまない理由にも何にもならないし
だからまずいことも、ないことにしないで
痛い小石もぜんぶさらえよう
真っ暗でも目を凝らそうと思う
フランシス・ベーコンの絵の前に立ったときみたいに